当ウェブサイトでは、「ウェブサイトの利便性向上」と「動きのあるデザイン」を目的にJavascriptを使用しております。
これらを正常にご覧になる為には、お使いのウェブブラウザの設定でJavascriptが有効になるように設定する必要が御座います。
詳しい設定につきましては現在お使いのウェブブラウザのヘルプをご参照ください。

2012-07-05

労協センター事業団第27回総代会・鼎談「地域を創りつなぐ経済─自給循環するコミュニティ」

高くつく原発、エネルギー自給体制を無数に
立ち上がる経営者のネットワーク



鼎談
鈴木 悌介 氏 
エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議世話役代表、珂小田原鈴廣蒲鉾本店代表取締役副社長
田中 淳夫 氏 
NPO法人銀座ミツバチプロジェクト副理事長、珂紙パルプ会館専務取締役
永戸 祐三 氏 
日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会理事長 


ふるさとの土地は未来からの借り物。少しも汚さず未来に返したい。─鈴木さん

永戸
 東日本大震災と原発破綻を契機に、鈴木さんは経営者として、再生可能エネルギーや地域経済を考えるネットワークを立ち上げられました。その経緯などお聞かせください。

「場所文化」が日本を育てる

鈴木

鈴木悌介さん

 地域に仕事や雇用が生まれ、お金がまわり、地域の自立につながる」と語る鈴木さん。これが、原発に頼らない地域社会をつくることにつながます。


 私は神奈川県小田原市で、鈴廣という蒲鉾屋を経営しています。慶応元年創業で、147年目になります。3月20日、全国の中小企業経営者が集まり「エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議」を設立しました。
 私は若い頃アメリカで起業し、帰国して家業の経営に参加してからは、小田原の商工会議所青年部の会長や、全国の商工会議所青年部の会長をやりました。そして私は、日本には個性豊かな地域と人たちがいて、それらのつながりが日本という国の魅力であると学びました。 わが国では戦後復興のため、効率的に物を全国に行きわたらせようと、できるだけ均質化・標準化しようといしました。私たちはその恩恵を受けましたが、その裏側で地域の歴史や風土、伝統的な文化や食(私たちはそれを「場所文化」と呼んでいます)をないがしろにしてしまいました。 今、日本という国の価値とは何かを考え直してみるべきです。日本のハイテク技術を可能にしているのは、日本人ならではの、ものの考え方、繊細さや緻ち密さであり、それらはみつ地域にある「場所文化」の中で育ってきているのです。
 そこで私たちは、「場所文化」がなくなれば日本人らしさもなくなり、ものづくりもなくなるという危機感をもち、勉強会や「ローカルサミット」という持続可能な地域づくりのイベントを重ねてきました。

普通の暮らしが経済の大前提

 そんな時起こったのが大震災です。震災後、箱根や小田原の観光地に、お客様が全くいらっしゃらなくなりました。こんなことは生まれて初めてでした。
 普通にまちを歩けて、普通に水が飲め、深呼吸ができるからこそ、「おいしいものを食べに行こう」とか、「箱根に遊びに行こう」となるのだと、つくづく思いました。経済の大前提は、普通の安心・安全な暮らしなのです。福島では子どもたちが線量計をつけ、目に見えないものに怯えて、安心な暮らしがなくなりました。これでは、経済成長なんて成り立ちません。
 次に起こった計画停電では、日本は非常に脆弱なエネルギー体制の国だったことがよくわかりました。そして昨夏、私の会社は15%の節電義務を負わされましたが、私どもは 25%の目標を掲げ、ピークカットと総電力使用量の両方の抑制をなんとか実現しました。

エネルギー自給で原発に頼らないまちを

 経済界は「原発がなくなると電気が不足し、日本経済は沈む」と言います。しかし私は、「経済人は、原発が必要だと思う人ばかりではないはずだ。原発のない方が、経済をきちんと回せてより強い地域や国をつくることができる」と思いました。そこで全国をまわり仲間を募って、「エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議」をスタートさせたのです。
 この会は、たんなる反原発運動ではありません。反対運動をしても、対立を生むだけです。私たちはそこに力を使うのでなく、再生可能エネルギーを中心としたエネルギーの自給体制を、小さくてもいいから無数につくっていきたいと思っています。 私は、ふるさとの土地は未来からの借りものだと思っています。これを少しでも汚さず、未来へきちんとした形で返したいのです。そう考えると、原発とは相容れません。この国の形を良い方向に変えていくチャンスが、エネルギーの自給のなかにあると思っています。

話題広がり会員も大きく増える

永戸
 周りの方から、そんなことをするなという意見は出ませんでしたか?
鈴木
 会社では、やめろと言われたことはありません。励ましのメッセージをくださるお客様も多いのです。 私たちが立ち上げた「エネ経会議」は、既存の経済団体の枠組みではなく、全く新しい枠組みでスタートしました。日頃の商工会議所活動とは別にやっており、また「エネ経会議」を立ち上げるには、日本商工会議所にもご挨拶に伺いました。確かにほとんどの経済団体は原発再稼働を主張していますが、「エネ経会議をやめろ」という話は聞こえてきません。むしろ会員はどんどん増えて、今450人ですし、マスコミ各社も注目してくれています。

算盤はじけば原子力発電は……

永戸
 今後の決意は。
鈴木
 私は、二つの理由で原発はおかしいと思います。一つは、原発を動かすこと自体が危険で難しく、万が一のことが起こったらとりかえしのつかない。使用済み核燃料の問題も解決していませんし、これでは未来にツケを残します。 二つ目は原発問題にまとわりつく、よくわからないお金の流れの問題です。国が上にあり、地域が下にあるようないびつな関係を崩さないと、本当の意味で地域の自立につながらないと思います。
 私は、決して高邁な思想や理想論で言っているのではありません。私たち商売人は、絶えず算盤をはじいています。算盤をはじけば、原発は高くつくということがわかってきたのです。
 私はこの夏、原発を止めてやってみたらいいと思っています。関西で15%足りないといわれると、24時間15%足りないと思ってしまう。本当は、真夏の数日のうち数時間の問題なのです。前もって準備し工夫、協力して節電すればしのげます。
 温暖化、CO2の問題につながる電力の総使用量については、節電、省エネに本気で取り組みながら、再生可能なエネルギーに置き換えていくことで解決できるはずです。例えば冷凍機は、10年ほど前の機械に比べると、今は電力使用量が3、4割少なくてすみますから、買い換えればいいのです。
 ところが中小企業のオヤジは、原発が動き出して電力料金が下がるかどうか様子を見ています。だから「原発をやめる」とはっきりさせれば、算盤をはじいて、いっせいに機械を買い替える方向に動きます。そうしたらお金がまわりはじめて、経済が活性化し、技術開発に拍車がかかり、新しいビジネスチャンスが生まれてくる。結果的に電力使用量は下がるという、いい循環になるはずです。
 私たちは、たえずビジョンや「こうありたい」という方向を掲げつつ、算盤もはじきながら、バランスよくやっていきたいと思っています。


様々な人々をつなげると新しい価値が生まれ、まちが賑やかに……─田中さん
銀ぱちくんが、まちの環境と命の大切さを教えてくれた

銀座でミツバチ?危ないじゃん!

永戸
 田中さんは、誰も発想しなかった“銀座で養蜂”のプロジェクトを軌道にのせ、そこから社会、環境を考える取り組みをされています。銀座のミツバチが面白いのは、宮内庁の許可なく皇居の中の資源を採ってくることです(笑い)。
田中

田中淳夫さん

 「ミツバチの命を、人間は戴いているのですよ」。小さなミツバチの生きる環境をつくることが、健康なまちを実現することにつながります。


 銀座ミツバチプロジェクトの田中です。私は銀座3丁目で、1日約5千人が出入りするビルの維持管理や、イベントスペース・貸し会議室の運営をやっています。できるだけ多くの方に施設を利用していただこうと、「食」や「老いる」ことの勉強会など、たくさんのコンテンツを呼び込み、銀座からメッセージを発信していく場づくりをしてきました。
 銀座で養蜂をやるきっかけは、食の勉強会で、ビルの屋上を探している盛岡の養蜂家(藤原誠太さん)がいると聞いたことです。私が「都会でミツバチを飼う?
 危ないじゃん」と言うと、「いやミツバチの命は短いので、人間なんかにかまっている暇はない」という説明でした。
 ミツバチは孵化してすぐに巣の掃除をし、4日目からは幼虫を育児したり、女王蜂のお世話をします。そのあと門番をします。匂いが違うよその蜂を、噛みついて追い出すのです。ミツバチはこんな内勤を20日間くらいしてから、営業に出てどんどん蜜や花粉を採ってきます。ミツバチは短い命を次につないでいかなければならず、人間なんかにかまっている暇はないのです。

銀座の蜜源は豊富で良質

 そこで閃いたのです。その養蜂家に屋上を貸したら、場所代として銀座産の蜂蜜がもらえるだろうと。非常に安易な次元の話で恐縮ですが。しかし実際は場所を貸すんじゃなく、自分で養蜂するはめになりました。
 ミツバチの行動範囲は4㎞四方。銀座から南の方向1・2㎞に浜離宮があって、およそ5分で飛んで行きます。西には皇居があり、1.5㎞を7分で飛んで行きます。銀座では、目の前に様々な蜜源があったのです。
 浜離宮に30万本の菜の花があり、マロニエ通りにはマロニエ、霞ケ関は栃の木です。霞ケ関には甘い密がたくさんあるのです(笑い)。それから蜜の透明度がとても高い、ユリノキがあります。これが1本あると、1斗缶の蜂蜜が採れるといいます。

いろいろな商品開発

 4年くらい前、世界中でミツバチがいなくなりました。農薬で、多くの生き物とともに消えたのです。「米どころ」ほど農薬を使うので、ミツバチは生きられません。山でも松くい虫対策のために農薬がまかれ、大変なことになっています。

永戸祐三さん

 「うまい!」田中さんからプレゼントされた蜂蜜をなめて。


 さらに農薬は、人間にもアレルギーの人を増やしていると考えられており、中央区では農薬を使わず、手作業で虫を駆除したほうがよいという話が出ています。皇居でも天皇陛下のご意志で、在来種を守るために農薬を散布しないようです。だからミツバチと蜂蜜にとって、農薬をまかない都会の方がよいかもしれません。
 さて銀座で採れた蜂蜜をデパート、ホテル、レストランなどに有償で提供するなかで、地元で新しい商品が生まれています。最近ではバーテンダーの皆さんが、銀座蜂蜜を使った「ハニーハイボール」というカクテルを作りました。「それを飲めば環境がよくなるから、肝臓が悪くなってもどんどん飲みましょう」と勧めています(笑い)。銀座はもともと職人のまちであり、銀座の技でさまざまな商品を生み出しています。「銀座大戦争」で  「かぼすだち」? 私たちは銀座蜂蜜を売ったお金で、「ファーム・エイド銀座」を始めました。都市で私たちが食べているものには、里山や奥山の多くの人の想いが込められています。「ファーム・エイド銀座」は、そんな地域と人を応援するイベントです。農薬を使わない生産者を銀座に招き、生産物を売っていただいて、顔の見える関係を作ります。鈴廣さんも応援、出店していただいています。 また銀座ミツバチのために、花を植える取り組みをすすめ、銀座のデパートや結婚式場の屋上では、新潟の茶豆を植えています。また去年、大分県竹田市の市長がかぼすを植え、徳島県阿南市の市長がスダチを植えました。  月9日の収穫祭で10は、「銀座大戦争」と銘打って、サンマにかぼすをかけるか、すだちをかけるか競いましたが、結局「かぼすだち」という仲間になったというだじゃれ話が、全国のメディアで発信されていきました。 このように都会にある膨大なコンテンツやナレッジ、銀座のまちの技や資金を地域につなげて、地域の方々が誇りをもって生産していただく仕組みをつくろうと活動しています。人と地域を変える    ネットワーク 永戸 銀座での養蜂は、地元の抵抗も強かったのでは? 田中 私のビルに入っている百貨店の会長が、「あの田中を誰が止めるのだ」と言ったそうです。「ギンザのサヱグサ」の三枝会長は、「銀座の歴史はせいぜい140年。だから奇想天外な輩は必ず出てやからくる。銀座はそれを受け止める。そして良いことは残っていき、まちにそぐわないものは消えていく」と言います。そこでまず私は、続けていくことが大切だと考えました。 永戸 ミツバチプロジェクトが軌道に乗ってから、人々の思いや考え方にどんな変化があったのでしょうか。 田中 銀座のシェフやパティシエが、銀座蜂蜜が欲しくて来られると、私は「一緒に屋上で作業しましょう」と誘います。 ミツバチは小さな体で、体重の半分の蜜を持って巣に帰ります。「ミツバチが一生のうちに私たちに与えてくれる蜜は、小さじの半分程度。そのミツバチの命を、人間は戴いているのですよ」という話をすると、彼らはがらっと見方を変え、命や環境のことを考えるようになってくるのです。 六本木や丸の内の再開発で、銀座は終わったという話がありました。しかし銀座には、全国の画廊の三分の一が集積しており、歌舞伎などの伝統芸能があります。銀座にある様々な世界の人々をつなげると、新しい価値ができて、まちがどんどん賑やかになり、わくわくするような楽しいことが広がります。ミツバチプロジェクトを通して、そういう人のつながりができました。遊びから、技になり  ルールが出来て…… 永戸 田中さんのネットワークづくりとまちを元気にしていく実践には、哲学のようなものを感じますが、いかがですか。 田中 いろんな問題や課題を解決するとき、僕は「遊び」が大切なキーワードだと思っています。僕が偉そうに「ミツバチは環境によい。まちでどんどん花を植えなさい」と言えば、誰もついてきませんよね。 ところが甘いものを食べたり、楽しい遊びを入れたりすると、何かが生み出されてきます。 僕のところには、今まで出会うことのなかった色々な職業や世代の方が来られます。そして皆で遊び心を出して「あんなことやりたい……」と遊びを極めていくと、技になりルールが出来て、仕事になっちゃうんです。 昔、収穫を祝って、田んぼのまわりに花を植え、体にも花をつけて踊っていたのが、花笠おどりになったり、華道になっていきました。「遊び」は、新しい創造力を引き出して、そこから次の何かを生み出すんじゃないかと思います。 永戸 保守主義者として知られる佐伯啓思さんは、今の世の中は末法であり、末法とは人々が頼るべき確かな価値が失われた状態で、いいかえればニヒリズムなのだと書いています。 そういう状況のなかで、橋下大阪市長のように、人を叩くことによって快感を与え、自分のいいなりの社会をつくろうとする動きが起こります。 それに引き替え今日の鼎談では、銀座蜂蜜や伝統的な食を作ってこられた方々から、「どうすることによって人間が、楽しくなり幸せになるのか」を示していただきました。 今日は、私たちの実践が地域・社会に何をもたらす可能性があるのかを、教えていただいたように思います。
linkLink  trackback 
category総合  time2012-07-27 10:07