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2012-04-15

政府、国会にもう一度訴える「協同労働の協同組合法」を早く

震災復興に生かせ / 北本市議会(埼玉)が2度目の意見書


1、「協同労働の協同組合法」の早急な法制化を強く求める。
2、国際協同組合年の取り組みを、国は関係機関と協議し推進すること。
3、東日本大災害復興に際し、協同組合団体にその社会的役割を十分に発揮させる支援を行うこと。

提出先:内閣総理大臣・厚生労働大臣・復興大臣・経済産業大臣・農林大臣・総務大臣・国家戦略担当大臣


 埼玉県北本市議会は3月14日、「国際協同組合年を契機に『協同労働の協同組合法』の早期制定を求める意見書」(提出者島野和夫議員)を全会一致で採択しました(3月25日号既報)。同市議会は07年12月議会で同法の「速やかなる制定を求める意見書」を採択、全国800を超える議会に意見書採択が広がる先駆けの役割を果たしました。しかし、未だに法制定に至っていないことから、再度の決議となりました。その思いを1回目の意見書提案者で、今回は賛成者として名を連ねた工藤日出夫北本市議と元北本市議で労協センター事業団(ワーカーズコープ)北本地域福祉事業所あったかい所長の島野正紀さんに伺いました。

協同で仕事を起こし、市民主体のコミュニティつくる仕組みを
工藤日出夫北本市議と島野正紀ワーカーズコープ北本所長に聞く


今やらなければだめだ

̶─なぜ再び意見書を出されたのですか。
工藤
 意見書を決議してから4年経ち、国際協同組合年を迎えても、未だに制定されない。国会は何をやってるんだ!という思いでいました。また、決議を上げた各地の地方議会議員の中にも、そんなのあったっけ?という人がけっこういる。このままでは意見書が生きない。そこで、もう一度政府と国会に訴えようと思ったのです。
 今回の意見書の特徴は、国連が決議した国際協同組合年の取り組みを全国に広げ、そのことを通して、協同労働の協同組合にも光を当てていただきたい。とくに、東日本大震災からの復興のために、協同で仕事をおこす協同組合という新しい仕組みを、もっと活用できるようにすべきだ、と力んでいます。
島野
 私も、知り合いの地方議員から「うちの議会でも、とっくに意見書を採択したのに、まだできていないの?」と、聞かれることがあります。
 全国協同集会(11月に埼玉県で開催)のプレ集会を2月11日に北本で開き、福嶋浩彦さん(消費者庁長官、元我孫子市長)に記念講演をしていただき、ペストフの福祉の三角形を事例に「新しい公共と協同組合」の話を伺った。
 その総括をする中で、震災復興に協同労働の協同組合法が大きな力になる、この法律だけは早く通してほしい、今やらなければだめだと、工藤さんたちと相談させてもらいました。

金を出すことは協同責任の証

̶─協同労働の協同組合が震災復興に有効だといわれましたが、とくにどういう点ですか。
工藤
 議員としてではなく、これまで社会教育活動をしてきた者の一人の意見として述べますが、コミュニティは誰かがつくってくれるのを待っているのではなく、苦労しながら自分たちで試行錯誤しながらつくりあげていくものと考えています。被災した自分たちの地域を自分たちの力で立て直そうとする過程で、新しいコミュニティがつくられていくはず。協同労働の協同組合は、そういう本当の意味での市民主体のコミュニティをつくっていくうえで有効だと思います。その大きな理由の一つは、出資する、ということです。
 原発事故による福島の場合は別ですが、それ以外の被災地では、いつまでも被害者の立場を強調しているだけでは復興できないと思うのです。資金は国や県から、人力はボランティア、住むところは役所が用意するものという発想だけでは復興に馬力が出ないのでは。 何より、住民自らが立ち上がり、自分たちの地域を復興するために、金の出せる人は金を出す。知恵のある人は知恵を出す。身体を動かせる人は身体を動かす。それ以外の人は復興活動に協力する。これが原理原則だと思うのです。その中で、金を出すことは全員で協賛すべきではないでしょうか。出せる人は5万円でも10万円でも出す。出せない人は1000円でも2000円でもいい、みんなでお金を出し合うところから始めるといい。金を出すということは、協同責任の証を出すということであり、そのことが運動の始まりだと思います。
 運動と経営、労働をつなぎ、ある程度の財も得ていく中で、新しい希望が生まれてくるはずです。これは、法制化しなくても、ある程度はできるでしょうが、法律ができ、所管官庁からきちんとしたメッセージを出していただき、災害復興費の中の一定のものについては、協同労働の協同組合で行えるよう規制緩和をしていただく。そして、協同労働の協同組合という考え方を地域の人たちに伝える説明会や運動をしていけば、もっと説得力が生まれる。法的後ろ盾があると、やってやろうという思いになれます。

生きる力つけ、地域に貢献できる働き方なら“よし頑張ろう”となる
戦後の公民館運動の教訓は今も


̶工藤さんは生涯学習に取り組んでこられ、戦後日本の復興過程で果たした公民館運動の教訓を東北復興でも生かせ、と主張しておられますね。
工藤
 終戦後、日本はものすごい勢いで復興した。そこには、公民館の力が大きかったと私は思っています。
 公民館が誕生したのは、終戦の翌年、1946年です。祖国再建への活路を拓くべき原動力として社会教育の役割が大きいという認識から、住民自らが勉強し、考え、活動していくために集まり、話し合う場としての公民館づくりが始まった。当時は「村の茶の間運動」という言い方もしたようです。
 家を焼かれ、家族を失った中で、この村の茶の間運動が野火のように全国に広がり、現在1万7千館ともいわれる公民館ができました。当初は、学校の廃校であったり、神社の社務所、村役場の空き室、特定の施設をもたない「あおぞら公民館」とか「カンバン公民館」もいくつもあったと聞きます。その根っこにあるのは、当時の文部省社会教育課長だった寺中作雄氏が執筆した文部次官通牒(「寺中構想」と呼ばれている)の中にある3点です。
1、戦後の民主主義をどう定着させ理解させるか。(自治)
2、疲弊・荒廃した地域産業をどう復興させるか。(生活再建)
3、地域の文化をどう掘り起こし、新しい地域の文化として根付かせていくか。(福祉と連帯)
 この3つは、今の東北にも、そして日本全体にも、一番必要なことではないかと思います。
 21世紀という新しい時代をデザインしていくための日本の地域民主主義をどう再興させるか。大企業中心でグローバル化した中で、地域の中で生きていく新しい産業のあり方は一体何なのか。無縁社会が問題になっていた時、親類縁者を全てなくしてしまったような人もいる中で、どうやって支え合っていく文化をつくるのか。
 この3つは、地域住民が立ち上がるべき課題であって、行政の施策を待っていては、いつまでたっても解決できないと思います。
─̶協同労働運動は戦後の公民館運動でもあり、21世紀型の「村の茶の間運動」だということですね。
工藤
 そうです。私は、寺中さんのお話を直接聞いたことがありますが、今でも忘れられません。
 「爆弾や鉄砲の弾でたま死ぬということがなくなった。戦争で命を失うことはもうない。この安心感が、日本人に供よしやるぞ僑という気持ちを起こさせた一番大きなものだったのではないか」
 貧しくて食べるものも住むところもないにもかかわらず、槌、鍬をもって立ち上がった一番の原動力はそれだったと感じました。
島野
 終戦直後は、それまで軍国主義で痛めつけられ、耐えに耐えてきたから、さあこれで自由になったという、人間の根源的なところでのエネルギーがあったと思います。 しかし今回は、高度成長、金さえあれば何とでもなる、という時代を経験してきた。その生き方が、自然の災禍と原発破綻によって打ち砕かれ、絶ち切られたわけです。 昨年8月 日の読売15新聞に、こういう人の話が載っていました。原発で都合数千万円もらい、いい家をつくり、大型の船もつくった。しかし、津波で船を流され、奥さんまで流された。俺の人生って、なんだったのか。 こうして価値観を問い直さざるをえなくなった人たちは、またどこかに雇用されたとしても、意欲を持てる仕事ではなく、金だけ儲ければいいという働き方なのかと思えば、なかなか立ち上がれないわけです。 しかし、地域産業復興に自分がいかに貢献しているか、社会参加しているかを認識できる働き方があり、それが社会的に保証されたものとなるならば、供よし、もう一度、頑張ってみよう僑という気持ちが湧いてくる。

21世紀の生産基盤つくる土台に

工藤
 東北復興をどうするかは、今の日本の一番大きなテーマであると同時に、そのことを通して、老いた人たちも、若い人たちも生きる力をつけていくことにつながるような取り組みにしていかなければと思います。
 宮崎県の綾町で、小学校の校長をされた方が「いまの子どもは動物としての生きる力、つまり、食物を獲得する力、危険を回避する防衛本能・戦う力、群れをつくる力、この3つの力が欠けている」と話していましたが、その通りだと思います。
 「生きる場所」には、食べものを獲得できる場所、働く場所、人間同士が支え合える場所など、いくつかの必要な要件があるはずです。その要件を今、地域が持っていない。家庭にもない。その意味では地域が自立していないし、人間も自立していないということになるのではと見ています。
島野
 作家の田宮虎彦に「花」という作品があります。戦争中、食い物をつくれと言って、「花禁止令」が出された。それと闘って、花をつくり続けた。 人間は、食い物だけが食べものではない。美しいものを見るとか本を読むとか、心を育てるものを食べなければだめだ、という教えです。
 自分たちが生きていくうえで必要なものは自分たちで作る、管理する、処理するという管理能力を持てるように自らを育てていく。そういう協同労働だからこそ、社会を変化させていく上での経済的基盤の萌芽をつくり、新しい社会の展望を生み出すものとなりうる。それを保証するこの法律は、 21世紀の新たな生産基盤をつくっていく土台になると思います。
 私は4年間、農業を軸にワーカーズコープの運動を実践してきました。難しさはいっぱいあるけれど、議員活動よりずっと面白いと実感しています。

前回にも増して運動のはずみに

̶─ところで、2回目の意見書というのは珍しいのでは。
島野
 珍しいけれど、何かを実現させようと考えたら、何回出してもいいんです。ただし、前と条件が変わっていないのに出すのは議会を軽視していることになる。 今回は国際協同組合年と大震災という大きな変化がありました。この意見書採択が、前回にも増して、運動のはずみになることを期待しています。



韓国では「協同組合基本法」



12月施行へ 労働者協同組合も社会的協同組合も設立可能

 韓国では、昨年12月29日、「協同組合基本法」が全会一致で国会を通過し、今年1月26日に公布されました(法律第11211号)。施行は今年12月。韓国の協同組合法制は、これまで日本と同じように縦割りの個別法で、労働者協同組合法はありませんでした。しかし、この基本法で、労働者協同組合も社会的協同組合も設立できることになります。

仕事おこし、雇用に政府内外から期待

 この法は、「協同組合の設立・運営などに関する基本的な事項を規定することにより、自主・自立・自治的な協同組合活動を促進し、社会統合と国民経済の均衡ある発展に寄与することを目的とする」とうたっています。ここ数年、「雇用なき成長」が続き、協同組合が仕事おこしと雇用の安定に寄与するであろうという期待が政府内外で強まっていました。また、2008年に社会的企業育成法が制定されて以来、営利目的を隠して社会的企業として認可を得、政府の援助を受ける事例が増加。1人1票で民主的に運営される協同組合が魅力的な対案として浮上していました。韓国の藩基文(パン ギムン)氏が国連事務総長を務めるなかで国際協同組合年を迎えたことも、早期法制化に影響したようです。
 運動側では、昨年9月に30余りの団体が集まり「協同組合基本法制定のための連帯会議」を立ち上げました。既存の協同組合の反対が心配されましたが、「個別協同組合法優先」の条項を入れることで解決しました。
 連帯会議常任共同代表・韓国地域自活センター協会会長の李炳学(イ ビョンハク)さんは、協同総合研究所に寄稿し、次のように語っています。 「これまでは多くの自活共同体、社会的企業が協同組合を目指しながらも、株式会社、有限会社といった営利企業の法人格で活動せざるを得ませんでしたが、この基本法によって、全分野、とりわけ工業や社会サービスなどの領域においても、自由な協同組合設立が可能になります。 さらに、脆弱階層とよばれる、必要な社会サービスを市場価格で購入することが困難な階層に、社会サービスや職場を提供する社会的協同組合を設立できるようになります。マイクロファイナンスや相互扶助を目的とする協同組合の設立も可能です。また、国家が介入する余地を高めないよう、政府援助および監督を最小化する方向で制定されました」(李氏の「韓国における協同組合基本法制定の経過と課題」と法全文は「協同の発見」2月号。なお、協同総研は金鍾杰(キム チョンコル)漢陽大学大学院教授を講師に「韓国協同組合基本法社会的経済と市民社会の創造へ」を5月16日1時半から池袋の東京セミナー学院で開きます)
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category総合  time2012-05-07 13:55