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2012-01-15

小山良太氏講演

「福島の復旧/復興へ向けて私たちができること」
 福島大学准教授の小山良太氏の講演「福島の復旧/復興へ向けて私たちができること」の要旨を紹介します。講演は、労協連東北復興本部と労協センター事業団東北事業本部、協同総合研究所が共催で、昨年10月25日に福島県郡山市で行った、講演・報告会「福島からの提言/復興に向けた取り組み」で話されたものです。


小山 良太 氏
福島大学経済経営学類准教授
福島大学協同組合ネットワーク研究所


賠償の枠組みを加害者につくらせない

 3つ、言いたいことがある。
 1つめは、3つの損害。2つめは風評被害の問題。3番目は地域・協同組合の果たす役割。現地で先行した取り組みを、現実の政策に変えていく運動や活動が、これから必要になってくる。3つの損害とは、フロー、ストック、社会関係資本のこと。
 損害や賠償の対象になっているのは、フロー(農産物、作付・出荷制限の実害)だけ。出荷制限になったら、過去5年間の単価平均で賠償する。実際に払われているのは、漁業の場合 82%。葉たばこは全て作付を止めたので 80%。しかし、これは原発事故の前に普通に稼いでいた金額で、農村、地域社会の損害のごく一部だ。これで補償をしていることになっている。東京などから見ると、「よかったね、補償されて。漁業もお金もらえて十分でしょう」と思われている。しかし、ストックである物的資本・インフラ(農地、施設、機械など)の損害もある。
 農地は1区画ずつ線量が違うのに、汚染マップをなぜ作らないのか。中山間地域では地形や地質で、線量が違う。これをはっきりさせないと、次の対策を練ることができない。現状分析なしで、復興計画も除染計画も立てようがない。
 一番大事な社会関係資本(産地形成投資、地域ブランド、文化資本、人的資源、ネットワーク、コミュニティ)の損害が見落とされがちだ。例えば、飯舘村は 30年かけて村づくりを行い、飯舘牛のブランドもつくった。全村避難になったが、被害を計算して賠償をすれば済む問題ではない。賠償の枠組みは、加害者である東電がつくっている。営利企業なので損害のコストをいかに抑えるかを当然考えるので、過小評価するだろう。
 現地にいる我々で損害状況を確認して、賠償の枠にどう乗せるかの理論化をしていかなければいけない。
 知りたいのは農地の汚染マップやリアルな話。どのくらい汚染されているのか。農業が出来るのか、出来ないのか。作物は作れるのか、作れないのか。売れるのか、売れないのか。本当の話が知りたい。ここをどうクリアーにしていくか、本当に真剣に考えなければならない。

地域の取り組みを政策にしていく

 国がやろうとすれば出来ることはいくらでもある。汚染マップ作りも、検査体制ももっと真面目に取り組むべきだ。本検査でサンプル調査をしても、誰も安心はしないので、風評被害は一切防げない。いくら自治体に言っても改まらないので、結局は、市民みんなでやるしかない。
 仙台、札幌、東京、福島で復興マルシェを実施した。伊達、福島、二本松の農家と、相馬の漁協にも参加してもらい、販売と地域の住民にアンケートやヒアリングを行ったが、買わない人の理由は「自分で測定が出来ないから」だった。放射性物質がどのくらい含まれているか、分からないから買わない。1万、2万ベクレルの数値が出た農産物があったことを心配している。
 サンプル調査は穴だらけ、放射線の高いものを買いたくないから、自己防衛のために買わない。福島県産が嫌いだからではない。国の行う検査体制に不備があるから、苦渋の選択として買わない。
 今回の放射線汚染の問題は、福島県の問題ではない。放射線の高いものは福島県産に限らない。例えば、海産物は福島県だけ避けても意味はない。福島県内でも、放射線量は地域でも、品目でも差がある。例えば、トマトは暫定基準値を超えたものはひとつもない。他の作物では、ちょっと高いものもある。放射性物質の移行率が低い品目も分かってきた。
 これまでは、チェルノブイリでのものしかなかったが、福島県の農地での移行率も分かってきている。こういう情報があれば、消費者は買いやすくなる。安全安心を担保する正確な情報がないから、不安になって買わない。この情報を出す仕組みが今、一番求められている。正確な情報がないから買わない消費者も被害者だ。福島県の新鮮な野菜を、直売所で買えた。安心安全な様々な品目の野菜が食べられることも、福島に住む一つの魅力だった。この問題は、生産者と消費者の対立に拡がっている。被害者同士が対立する構造を、マスコミも一緒につくってきている。 一番の加害者は東京電力。その次の加害者は政府。緻密に検査をちみつして、汚染マップを作っていたら、こんなに風評被害は拡がらない。風評被害がいつまでも終わらないのは、政府の責任だとはっきり言える。
 では、どうすれば解決できるのか。検査体制の精度をどう上げるかにつきる。それは正確な検査、流通に対する適切な情報。色々な企業が独自に検査を始めて、「うちのだけ安全だよ、あそこは危ないよ」となったら、もっと風評被害の問題は拡がる。そして、行き着くのは偽装。
 9月に福島に消費者庁の人が来て、生協の理事と懇談をした。そこに参加したが、消費者庁の人が、「ビジネスチャンスだ」「生協が物流問題を入れて、自分のところだけ安全性を確認できれば、他の企業を出し抜ける」と。 私は「とんでもない。そんなことしたら風評被害の問題が悪化するし、産地をはじめいろいろなところが混乱する」と話した。適切な情報は統一したやり方で集め、提供しないといけない。地域での取り組みを現実の政策にしていく、ルートづくりの方が大切だと思っている。政府がやらないから我々でやろうと、地域の懇談会で話すと、なぜ被害者である我々がやらなくてはならないのか、と言われる。私もそうは思うが、政府は、やる必要がないし、やったら損をしてしまうと考えている。だから、こちらが人と資金をさいてもやれば、次につながると思いやっている。

4段階の検査で安全/安心を

 具体的にやることは、次の通り。放射性物質の含まれた食品を流通させるためには、4段階の検査が必要だと考えている。今、国がやっているのは、食品安全衛生上の出荷前検査のみ。出荷前に、一番早出しのものを地域ごとにサンプル検査する。500ベクレル以下なら出荷できるが、以上ならその地域全体出荷停止。3週連続クリアしたらOK。 この検査のみ。このサンプルを増やすことを、国や県は一生懸命やっているが、しかし、サンプルをいくら増やしても、風評被害の問題は解決できない。出荷前のサンプル調査をいくらやっても、ベースの農地がどれだけ汚染されているのか分からないので、安全性は確認できない。
 農地1区画ずつ汚染マップを作った上で、品目や地域、地形によっての移行率を確認して、危ないところだけ出荷前検査のサンプル数を増やす。母集団の偏りをきっちりと調査して、サンプル調査をすれば精度が上がる。 今は母集団を全く検査しないで、サンプル調査をしている。それでは、消費者は信頼しない。11年のデータがあれば、12年に比較することも出来る。
 全農地での土壌分析をする汚染マップの作成、地域・品目ごとの予備検査で放射性物質の移行率の測定、地域・品目ごとの出荷前検査。この3段階検査をやると、消費者が安心出来る放射線の低いものを選べる。低ければ農家も安心して作付けが出来るし、安心して売ることが出来る。
 4段階目の検査として、消費地検査を地域・品目ごとに、直売所などでベクレルモニターを使って行う。誤差や検査限界があるので、正直に表示する。そして、消費者各々が判断する。ここまでやればサンプル検査の精度が圧倒的に高められる。
 土壌学の専門家などは、農地1区画ずつの検査は出来ない。10年かかると言うが、彼らの言う検査は、精密検査のこと。我々は1ベクレル単位の細かい数字はいらない。簡易測定で、高いか低いかだけを知りたいのだ。田んぼを簡易検査し、マップに落とすと、放射線の高いところがよく分かり、次期はどうしようか、考えることが出来る。放射線量が高くても、移行率が低い作物を作ることで、なんとか対応が出来る場合もある。対応策もあるということだ。

福島の復興は夢のあるものに

 日本の場合、基準値は農産物はほとんど500ベクレル。水、牛乳300ベクレル。毎日食べるものと、年に1回しか食べないものの基準値が同じ。累積被曝は、毎日食べるものが大きく関わるので、基準値は毎日食べるものを低めに設定しないと、意味がない。
 外国の基準値の問題ではなく、日本人の食生活に合わせて、考えなければいけない。米を1年間にどのくらい食べるか、水をどのくらい飲むか分かっている。それに合わせて基準値を決めないとならない。日本の食生活にあわせて、そこから逆算して放射性物質の含有量をどこまで許容するかを決めるべき。これがあれば消費者の反応も変わってくる。同じマニュアルで汚染マップ作る、移行率を出す、基準値をつくる、自主検査をする、そこまでやれば反応は変わってくる。
 新しい形をつくるために、福島でやるべきこと。そのひとつは、ローカル・フード、ローカル・エネルギー、ローカル・ケアだ。福島は今、地産地消ができないが、これをするためには世界一精度が高い検査体制をつくることが必要だ。
 エネルギーに関しては、例えばチェルノブイリの被害に遭った、ドイツのシュヴァルツヴァルト地方を参考にする。ここの農協は、事故の翌年から、全牛舎に太陽光発電をつけた。酪農家は地域の牛乳とエネルギーをつくり、地域の小学校などに電力を供給している。今は風車も3台設置している。地域資源を十二分に生かし、牛乳、乳製品、観光にも力を入れている。
 地域にあわせた文化活動、福祉なども併せてつくることで、復活どころか新しい産業を生み出している。その中心になっているのが協同組合。被災した福島が復興だけでなく、次に向かった取り組みを発信していけば、夢がある。
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category総合  time2012-05-03 10:30