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「協同労働の協同組合」法制化を目指す取り組みについて

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2007年10月3日に行われたJAグループの「協同労働の協同組合」法制化に関する学習会にて、労協連・古村伸宏専務が『「協同労働の協同組合」法制化を目指す取り組みについて』と題して報告を行いました。概要を紹介します。

日本労協連の歴史と現状

■雇用保障の一環から自己規定の模索へ

日本労働者協同組合連合会は全国組織ができる前段、1971年頃から、特に中高年の失業をしている人たちが、高齢者事業団や中高年事業団という名前の事業体をつくり、主には自治体から草刈りなどの作業の委託を受け、自分たちの働く機会をつくるというところから労働者協同組合(ワーカーズコープ)運動は始まりました。

1979年に、全国にある40くらいの事業団が集まり、 今の労協連の前身である全国協議会を設立しました。 当時は、雇用・失業保障運動の一環という位置づけでしたが、どういう組織として自分たちを規定したらいいのかということで、いろいろ研究しました。

そこで出会ったのが1980年のICA(国際協同組合同盟)大会での『レイドロー報告』でした。

この報告のことを知ったのはかなり後のことなのですが、この中で労働者協同組合 ―働く人たちがお金を出し合い、経営し、働く協同組合― がある、これからの時代に重要な役割を果たすものだ、という記述に接し、これだ!と思ったわけです。 その後、イタリアの生産協同組合などの調査も行いながら、1986年に正式に労働者協同組合として自分たちを規定しました。

ここまでたどり着くのに15年くらいかかったわけですが、非営利組織という言葉もあまり使われていない時代に、自分たちの組織を“労働者協同組合”と規定し、1992年にはICAに加盟することができました。

■事業高220億、3分の1が福祉・介護

現在の事業と組織の状態ですが、労協連全体で、事業高は220億。その3分の1が福祉・介護の分野です。この約半分を、労協連がつくったモデルのワーカーズコープであるセンター事業団が担っています。

介護保険が始まる以前は、建物管理、草刈り、生協の物流の仕事などが7~8割を占めていましたが、介護保険を契機に、市民の自発性や主体性を基礎にしながら、地域の福祉をつくりだそうと、各地でヘルパーの養成講座を開くところから出発しました。 全国で5万人のヘルパーを養成し、その講座の修了生たちが中心になってワーカーズコープを作り、地域の福祉をよくしていく拠点として「地域福祉事業所」を設立しようと呼びかけました。

現在、地域福祉事業所は全国に300カ所できました。農協や生協の方々と一緒になって協同組合が地域の福祉を担っていくということで、フォーラムを一緒にやらせていただいたり、栃木県大田原市での障害児のデイサービス、滋賀での若者就労支援など、JAの方々の協力を得ながらやっている例もあります。 高齢者、若者、障害者の自立や就労にかかわる取り組み、子育て支援、様々な福祉に関わる領域をこの地域福祉事業所が中心になりながら事業としてやるとともに、地域のネットワークづくりにも貢献しています。

また、公共サービスの民営化の流れの中で、福祉の領域を中心に、新しい公共の担い手になっていこうという取り組みを強化してきました。 その結果、指定管理者の仕事は全国で50ほどですが、東京を中心に、学童保育、保育所、児童館の仕事が増え、期待されています。

協同労働法の内容、目的

■労協と協同労働の協同組合との違い

これらの事業は、企業組合法人やNPO法人、生協法人などの法人格を活用しながら行っていますが、どの法人格も労働者協同組合の組織や理念に合ったものではなく、労働者協同組合の法制化の運動を進めてきましたが、現在は「協同労働の協同組合法の制定を」、と言っています。

「労働者協同組合」と「協同労働の協同組合」とは、意味合いが若干違います。
労働者協同組合は言葉のとおり、「働く人たちがお金を出し合い、経営にも参加し、働く」という、働く人たちの関係を示しています。 「協同労働の協同組合」は、「働く人々、市民がみんなで出資し、民主的に経営し、責任を分かち合って、人と地域に役立つ仕事をおこす協同組合」と定義しています。

「協同労働」とは、簡単にいうと「働く人同士が協同し、利用する人と協同し、地域に協同を広げる」という“3つの協同”を進めるというものです。 つまり、協同労働の協同組合は、労働者協同組合的な集団を中心にしながら、サービスの利用者も、賛同者も組合員になれる協同組合です。 例えば子育て支援の仕事の場合は、働いている人たちはもちろんですが、その子の親も組合員になり、この協同組合の主体者として事業に参加することができる。また、一般の市民も出資という形で参加し、自治体も出資をして組合員になることができる、という仕組みを構想しています。

■新しい働き方、機会創出、新しい公共

日本の労働法制は労働者=雇用労働者となっており、労働者が出資者であり経営者でもあるという形態は位置づけられていません。 私たちには約30年の実績があり、ワーカーズ・コレクティブの人たちも同じくらいの規模で事業をされています。これらを考えても、法に値する事実 ―立法事実がすでに存在しています。労働者協同組合に関する法律がないのは、先進国の中で日本だけであり、そうした新しい働き方を位置づけてほしいと考えています。

しかし私たちは、単に自分たちの存在を認めてほしいということで取り組んでいるわけではありません。今の日本の社会や地域のありようをどう変えていくかということを考えると、「協同労働の協同組合」の法律や組織が必要となってくる。

誰かに雇われるのを待つのではなく、地域に必要な仕事を自らつくりだし、協同して働くという働き方が広がり、積極的に自分たちで働く機会をつくっていこうとする人たちがもっともっと増え、地域を再生していく。そういう社会づくりを進めるために、この法律をつくってほしいのです。

また、障害者、若者、中高年者、高齢者など働く機会がなかなか得られない、あるいはワーキングプアと呼ばれるような収入しか得られない仕事に追いやられている人たち、優先順位がどうしても後ろに回されてしまう人たちの働く場づくりを社会全体が積極的に支援する、その一つとして、こういう形態を法制度として認めてほしいと思うわけです。 さらに、「新しい公共」を促進する意味でも協同労働の協同組合法が必要になってきていると思います。
「官から民へ」ということが盛んにいわれ、行政がやってきた仕事も、農業の分野も教育、福祉の分野も、何もかもが市場原理の名の下に営利目的で行われる。あるいは、行われようとしている。それが、本当にいいのか。本来の“公共”という観点から見たときに、どう位置づけられねばならないのか。

こうしたことが問われる時代にあって、“お上が施す公共”ではなく、そこに住んでいる人たち、あるいはそのことに直面している当事者が、能動的な立場でそれを担う側に回れないのか。 私たちの中では、“市民主体の新しい公共”という言い方をするのですが、市民が行政サービスを一方的に受ける立場にいるのではなく、その事業を担う立場にも回っていく。そういった新しい公共を促進する意味でも、協同労働の協同組合法が必要になってきている、ということを訴えているわけです。

■NPO法人の限界と出資の意義

現在、NPO法人は3万を超え、行政に代わって、あるいは行政とパートナーシップを組んで新しい公共を担う存在として注目されてきています。
ところが、日本のNPOのほとんどは、事業を行う点では非常に脆弱な基盤の上におかれています。NPOの事業体としての経営基盤は、一般的には会費や寄付、助成金でまかなうことになっています。しかし、日本の中には米国のような寄付の文化は育っておらず、どうしても収入が安定しない。
なによりもNPO法は「特定非営利活動促進法」ですから、非営利の事業体を積極的に支援するという法律にはなっていません。

NPO法人が行う事業は、一般の営利企業と同じ率で税金がかかりますし、非営利の活動のための事業という位置づけにされていますから、事業丸ごとの非営利性は認められていないわけです。
実際、公共サービスの指定管理者などに応募しても、NPO法人のほとんどは第一次審査で経営基盤が弱いということで落とされる。最終審査まで残っても、本当に事業が担えるのかということに疑問が付され、選定されない状況になっています。

労働者協同組合は広い意味でのNPO(市民活動団体)であり、市民事業の担い手の一つと位置づけているのですが、その核心点には、みんながお金を出し合って事業体としての経営基礎をつくるということがあります。
センター事業団でいうと、1口5万円で、一人ひとりが報酬の2カ月分ぐらいを出資として積み立てることにしています。ある仕事をして、代金が支払われるまでだいたい2カ月。その間の回転資金を自分たちで準備しようというもので、90%くらいの達成率になっています。
センター事業団の場合、無借金で、事業高100億になっていますが、事業の元手となるお金を自分たちの出資と事業活動の中から生み出す。これは、数値的な基盤以上に、働いている人たちの責任感、事業として成り立たせようという主体性が、仕事の中でも経営の中でも発揮されるという事実をつくってきたのではないかと思います。

■非営利協同基金を組織の外におく

私たちの組織は事業体なので、利益をあげていきます。その利益を何に使うのか。そこに私たちの非営利性をしっかり込めるということで、剰余金処分の優先順位の第一に、非営利協同基金を積み立てることにしています。この基金を組織の外に置き、地域の就労創出や福祉の増進のために使ってもらいます。だから、その基金には税金をかけないでいただきたい、ということで設定しています。

法制化の情勢と運動の現状

■協同労働法制化に賛同と協力を

「協同労働の協同組合」法制化をめざす市民会議(市民会議)は2000年に結成されましたが、この6月に中央労福協会長で前連合会長の笹森清さんが会長を引き受けてくれ、9月15日の法制化を求める市民集会には様々な方々が参加され、請願賛同団体署名の取り組みも大きな流れになってきています。
署名活動を通じて、協同労働の協同組合の深い意義をあらためてつかみ、こういう法律ができた暁には、こういう組織や考え方で事業をやっていこうという人たちが、ものすごい勢いで全国に広がっている手応えを感じています。
衆議院ではこれまで予算委員会と本会議の場で、3度ほど質疑応答がされています。坂口厚生労働大臣の時に「多様な働き方が広がっていることは承知している。他の法制度との整合性を含め検討中なのでしばらく待ってほしい」という答弁をされましたが、厚労省でも相当検討は進んでいると聞いています。

法制化運動の広がりが法律の中身、レベルにも関わってきます。こういう法律をつくろうという市民のうねりをつくり上げて国会に届けていきたいと思っています。
21世紀の日本は、協同労働運動、協同組合セクターが地域社会を再生する、公共性の高い市民組織として役割を担っていく時代だと確信しています。その一翼として、「働く」ということを支援する協同組合法制を日本社会に根づかせる取り組みへの賛同と協力をお願いします。

(注)法制化の現在の情勢につきましては、『「協同労働の協同組合」法制化をめざす市民会議』ホームページをご参照願います。
http://associated-work.jp/
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