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ILO(国際労働機関)協同組合部長 ユルゲン・シュベットマン氏
ディーセントワークと協同組合


ユルゲン・シュベットマン氏  
1954年、ドイツ生まれ。大学で企業管理(協同組合経営)を学んだ後、カメルーンなどでコーヒーなどを輸出する4つの協同組合のアドバイザーや地方開発銀行で信用業務アドバイザー。87年からILOや民間会社で協同組合開発プロジェクトの策定に関わり、94年からジュネーブでILO協同組合部主任。2001年から現職。

地域を大切に仕事をおこし貧困を減らす
協同組合振興勧告は25カ国が法律に

労協連の「7つの原則」とほぼ合致
  日本労協連の25周年記念のシンポジウムにお招きいただいたことに感謝の意を表したいと思います。
  最初に、ILOの視点からディーセントワーク(尊厳ある労働、人間らしいまともな仕事)と協同組合についてお話ししたいと思います。
  ILOは、ディーセントワーク、つまり「自由・公正・安全ならびに人格的尊厳という条件で人間らしい生産的な仕事」を確保する機会を男性、女性、すべての人々が得られるように行動しています。
  これは、昨日読ませていただいたのですが日本労協連のみなさんが掲げておられる「7つの原則」、「よい仕事」とほぼ合致するといってもいいと思います。

ディーセントワークの欠落みる4項目
  ILOは、それぞれの地域や国でディーセント・ワークの達成状況をみる方法論をつくりました。それは「ディーセント・ワーク デフィシット」といい、ディーセント・ワークのどの部分が欠落しているかを調べるものです。これは四つの項目からなっています。
  第1は、雇用の欠落です。いま世界では完全失業者が1億6000万人、生活できないような非常に安い賃金で雇用されている人が10億人います。
  第2は、権利の欠落です。結社の自由への抑圧、強制労働、児童労働といった問題が今もなお、いろんな国で起きています。
  第3に、社会的保護の欠落です。労働者全体の20%しか適切な社会的保護(働く能力をつけていく子供の時代から、失っていく高齢期に至るまでの)をうけていません。
  第4に、働く人たちの社会的な対話(政・労・使の対話、交渉)の場の欠落です。とくに農村部では一人一人がバラバラで、自分たちの要望を政府や地主や政治家に伝えられないでいます。

ディーセントワーク達成に貢献
  では、協同組合はそれらの問題をどのようにして解決しているのでしょうか。
  雇用問題ですが、ICA(国際協同組合同盟) によれば、協同組合が作り出している雇用は1億人を超えています。これは、世界中の多国籍企業の雇用総数よりも多いのです。
  権利の問題では、協同組合は結社の自由を促進し定着させています。児童労働に反対する闘いにも参加しています。ガーナのココア農園における児童労働に抗議する運動などが展開されています。
  社会的な保護の問題では、協同組合が社会的サービスを提供しています。児童に対するケア、身体に障害を持つ人たちや高齢者へのケアなどです。それから、社会的に不利な立場にある人たちが自助を通して仕事をつくりだしています。イタリアでは、知的障害、精神障害、アルコール中毒などの人たちが社会的協同組合を通じて仕事を見つけだしています。
  次に、社会的な対話ですが、私自身は、この問題では協同組合がもっとも力を発揮できると思っています。とくに、保護も法の適用も受けないインフォーマル経済のもとにおける未組織労働者や中小企業が発言権と代表権をもち、発展計画をもてるように支援しています。アフリカの多くの発展途上国ではコーヒーの販売において協同組合が重要な役割を果たし、働く人たちの声を代弁しています。
  このように協同組合は、経済的な機会を創り出し、貧しい人たちの権利を保護し、当事者能力を高め、民主的な運営、公正な利益配分を行うことなどを通じてディーセント・ワークを達成することに貢献できます。
  また協同組合はコミュニティへの関与という点でも大きな役割を発揮しています。
  だからこそILO は協同組合の発展のため、重点的にとりくんでいるわけです。

雇用創出での労協の優位性と成功例
  さて、雇用の問題ですが、協同組合は雇用をどのようにして創り出しているのか。5つの方法があります。
  1つは、協同労働の場をつくることです。
  2つ目は、使用者としてです。生協、農協などの協同組合は人を雇って仕事を創っています。
  3つ目は、零細農家などが生産物を協同組合を通じて販売することによってです。
  4つ目は、協同組合の研究所や学校での取り組みが副次的にさまざまな雇用創出につながっています。
  5つ目は、協同組合と取り引きする企業での仕事をつくるという側面です。
  その中でも労働者協同組合は、個人では弱さがある資金、交渉能力、アイデア、生産性、技術などの面を高めあうことができるという点で、より優れているといえます。
  労働者協同組合の中でも、成功しているパターンには4つあります。
  1つは、伝統的な労働者協同組合で、成功例の典型はスペインのモンドラゴン協同組合です。2つ目は労働請負協同組合で、インドやスリランカで成功しています。自分たちの技術を企業や国に売るものです。3つ目は労働者が所有する企業です。BNAというアメリカでも有数の出版社は協同組合方式で運営しています。4つ目には、自営業的な人たちがさまざまな面で協同する例です。零細企業があつまってインターネットを活用したサービスを提供する協同組合もあります。

ソーシャル・パートナー
  次に、労働者協同組合の法制の問題についてお話しします。
  労働者協同組合の組合員は、労働者であり、かつ雇用者であり所有者であるという3つの側面をもっているユニークなものです。そうした点からいえば、労働法上の労働者という規定を適用することには疑問があります。
  ILOは、1995年に専門家を集めて、労働法、労使関係法、労働基準法を協同組合に適用できるかどうか検討した結果、労働者協同組合の組合員は「政・労・使」という従来のカテゴリーにプラスした第4のカテゴリー、ソーシャル・パートナーとみなすべきだという勧告をだしました。
  ILOも日本労協連が進めている「協同労働の協同組合法制化」を支援したいと思います。950くらいの参考資料、データーを提供できますのでご相談下さい。法案実現のお役にたてればと思っています。

国連の貧困削減計画の一環

  ILO勧告193号(協同組合振興勧告)について少しお話しします。
  193号は、2002年に採択されました。それ以前の勧告では発展途上国を対象としていましたが193号においては発達した資本主義国を含めた協同組合全体を対象としています。また冷戦中には協同組合は国家による開発手段として使われてきましたが、現在の193号勧告においては自立的な市民社会の組織としての位置づけが強化されています。また193号勧告は国連の貧困削減のためのミレニアム(2000年に出された)開発目標の一環という意味も与えられています。
  すでに、25カ国が自らの法律に、この新しい勧告の内容をとりいれています。そして60カ国が国全体の会議などを開いてこの問題について話し合っています。

ICAとILO強いパートナーで
  最後に、一昨年のICA(国際協同組合同盟)オスロ総会でILOソマビア事務局長が行ったスピーチを紹介します。 ありがとうございました。

  (ビデオ)「協同組合運動は今、めざましいグローバルなネットワークを代表しており、世界の隅々のコミュニティ、すべてのセクターの経験から引き出された優れた事実を発展させようとしています。
  ILOは協同組合の優位性(別項)を明確にしていますが、協同組合が現代のさまざまな課題に挑戦し、解決策を提供する決定的な手段として充分に評価されていません。
  コミュニティを大切にして、仕事をおこし、貧困を減らし、価値と利潤を結合させ、グローバリゼーションをより公正で包括的なものにしようとするところではどこででも、協同組合運動を公正で、生産的、そしてバランスのある世界のための主要な担い手として位置づける必要があります。
  ILOと ICAとは強いパートナーシップを持って歩んできました。ILOは皆さんを支援しています。皆さんは現在と将来を代表しています。より素晴らしい将来のために進んでいこうとしています。誇りある歴史を共にさらに発展させていきたいと思っています。」

ディーセント・ワーク創出における協同組合の優位性 
(昨年のICAソウル総会でのシュベットマンさんの報告)

  @協同組合による意思決定過程への参加や、労働条件・価格に関する交渉能力の拡大などの「エンパワーメント」
  A協同組合を通じた就労創出(協同組合は、利潤や株主価値を唯一の指導原則としないことから、資本主義企業が「儲からない」経済部門や地域においても就労を創出することができる)、経営危機の企業における、従業員の協同による就労救済などの「新たな機会」の創出
  B国家がもはや提供しようとしないか、提供できない社会サービスやコミュニティ・サービスの組織化、弱い立場にある人々に援助を提供する「社会的協同組合」などによる「保護の拡大」。

(日本労協新聞2004年10月5日)

 

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